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感覚的バレエ その1 ―回るか、回すか ピルエット編― 

言葉だけの表現で、相手にどこまで伝わるんだろう?

ささやかながら、物を書くという仕事に携わっている私にとって、
「言葉というものは、伝えたい全てのことを表現できるものではない」
という、言葉に対する頼りない感覚をいつも持っています。

伝えたいことを完全に表現するとしたら、
全世界の人類が持っている全ての言葉をもってしても、
まだまだ語彙が足りないような気がします。
それを受け取る側も、人が表現する言葉だけでは、
理解するにはやはり情報が足りないような気がします。

だからこそ、言葉を排除しながら、
人々の感情を雄弁に表現できるバレエというものに
人は魅せられるのではないでしょうか。

私自身がバレエを踊ってみても、
言葉より身体で表現できることはいつでも快感で、
バレエの方が細やかな感情まで表現できるような気がしています。

毎日、パソコンやメールで沢山の文字に埋もれ、
人とのコミュニケーションも、感情を隠したり、
余計に飾りつけた言葉を投げ合って生きている現代人にとって
言葉に頼らない表現方法を持つバレエのような芸術は、とても貴重な存在。

そんなバレエを生活の一部に取り入れられていることは、
とても幸運で快感なことだなと、しみじみ思います。

ですが、そんなことをはっきりと感じていながら、
バレエを習う大人というのは、
どうしてもダメな癖が出てしまいますね。

何かを習う時、いつだって言葉で理解しようとしてしまいます。

言葉で理解できる、というのが、
大人バレエの最大の利点ともいわれますが、
子供の頃から身体の感覚でバレエをマスターしてきたバレエの先生が、
必ずしも言葉での指導が巧みだとは限らないわけで、
言葉の表現になんとか頼ろうとする大人には、
なかなか指導の心髄が伝わってこないことがあります。

なので、やはり大人も言葉ではなくて、
感覚で身につけられるように、
身体の節々まで感覚を研ぎ澄ませておいた方がいいのかもしれません。
そうすれば多分、脚の形や姿勢、重心の置き方など、
プロのような完成体に近いバレエをマスターできるような気がします。


そんなことを一人で考えていたある日、
たまたま参加したとあるスタジオの講習会で、指導していた先生に、
今後バレエを教わる側としてためになるようなヒントを頂きました。

その日はピルエットの練習をしていたのですが、
先生の説明が、ちょっと目から鱗だったのです。

子供時代も、大人からのバレエでも、
私の場合、ピルエットの回り方の指導方法は、
どの先生もほとんど同じでした。

それは、4番プリエで軸足側に重心を置き、
そこから腕を開いて、一気に勢いをつけて回る、という方法。

いろいろな先生の指導を受けましたが、
やはり腕の回し方は重要で、
開く力と、閉じる力の両方に気を配らないと、
きれいな1回転、もしくは2回転以上のピルエットは回れない、
と当たり前のように教わってきました。

ところが、先日の先生は、
4番プリエの時に、身体を十分に逆方向にねじっておいて、
回る時には、そのねじりをほどくように一気に開放して回る、
と教えていたのです。

つまり、「回す」のではなくて、
「回ってしまう」という感覚です。

私にとって、「回す」以外のピルエットは新感覚でしたが、
その先生が言う回る原理というものは、よく理解できました。
なるほど、これなら手を広げなくても回れるし、
手を腰に置いたり、扇子を持ったまま回ったりすることが可能になるわけです。

とはいえ、今までとは力を入れる部分がちょっと違うので、
うまく回転するのは難しいですね。

こんな風に違った表現で教わると、
先生方も、ピルエットは回すもの、
いや、回ってしまうもの、と、
それぞれが違う感覚でバレエをマスターしてきたということが分かって、
さすがにバレエというものは芸術なんだなと納得しますね。

「回す」も「回ってしまう」も、回るヒントに違いありませんが、
結局バレエというものは、
どこまでも感覚でマスターするもので、
その完成体までのアプローチは、決して1つではない、
ということが言えるのではないでしょうか。

それなら、ますます言葉だけでの指導は物足りないもので、
1つとはいわず、沢山の情報を耳に入れてから、
自分の身体で試してみて、
その感覚で理解する、ということが、
上達につながるような気がします。

これからは、パの指導を先生に仰ぐ時は、

「どうやってやるのか」

を教わるのではなくて、

「どんな感覚になるのか」

を教わっていこうかと思います。


バレエは言葉のない芸術ですから…。

どれだけ感じられるかが、
正しいパをマスターし、巧みに表現できるようになる最初の一歩。

多分きっと、そういうことなんだと思います…。



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